足関節関連リンク: 足関節外側靱帯損傷のストレスX線所見(報告者: 鈴木健二)
足関節関連リンク: 足関節捻挫に対する競技復帰(高校バスケットボール)のための治療法(報告者: 奥田英樹、飯田文彦、白石洋介)
初診時の内反ストレス撮影において外側靭帯断裂が疑われた4症例についての治療と経過を報告する。いずれの症例も受傷歴はなく、初回捻挫であった。治療法はテーピング1症例、ギプス固定1症例、手術的治療2症例である。4症例とも9〜12週でランニング等スポーツに復帰でき、その段階で正座も可能であり、特に愁訴はなかったが、他覚的な不安定性(内反ストレスX線による TTA ・ ADS)に違いが生じた。保存的・手術的治療の選択について考察し、最近の治療に関する考え方を文献上から紹介したい。
(初診時)
患者: 42才女性
受傷機転: 当日、ママさんバレーにてジャンプ着地時に内反捻挫
症状: 歩行可能であったが歩行時痛+、前距腓靭帯(以後 ATFL)部とリスフラン関節部に圧痛著明
ストレスX線(無麻酔): TTA 19°(健側 8°)、ADS (+)(図1: 受傷時ストレスX線と受傷時外観)
診断: ATFL は断裂、踵腓靭帯(以後 CFL)も断裂の疑い。
処置: ギプスを薦めたが希望により固定用テーピングとし、松葉杖にて3日程免荷を指導。(6日)
テーピング除去し、綿包帯とエラスコット包帯固定に変更。荷重時痛 (+)、圧痛 (+)、片松葉杖にて歩行。(2週)
包帯固定にて歩行時痛 (−)、包帯なしでは歩行時痛多少あり。松葉杖除去。温熱療法開始。(3週)
足関節サポーターへ変更。圧痛少ないがあり。歩行時痛 (−)、inversion はまだ禁止。軽い可動域訓練とアイソメトリック訓練開始。(6週)
足関節底屈を強くした際に多少疼痛あり。カーフレイズ、腓骨筋トレーニング開始。(2ヶ月)
長時間の歩行にて軽度の関節痛。可動域制限 (−)、ジャンプトレーニング、ジョギング開始。(12週)
ランニング、バレーボール復帰問題なし。inversion の痛みなし。正座としゃがみ込み可能。治療終了。動揺性は残存しているので、運動時は足関節サポーターはしばらく着用を指導。
ストレスX線(無麻酔): TTA 14°(初診時19°、健側 8°)健側差 6°(図2:12週ストレスX線)
(初診時)
患者: 16才、男性、高校野球部。
受傷機転: 前日、段差を降りる際に内反捻挫した。
症状: 荷重時痛強く歩行不能、ATFL 周囲の圧痛著明、腫脹強い。
ストレスX線(無麻酔): TTA 12°(健側 4°)、ADS (+)(図3:受傷時ストレスX線)
診断: ATFL は断裂、CFL は損傷の疑い。
処置: ギプス固定(5週の予定)とし、松葉杖歩行とした。(9日)
ヒール付きギプスへ巻き直し、翌日より部分荷重、マイクロ波の方針とした。(3週4日)
ギプス巻き直し。圧痛少しあり。サポーター採型。ギプス内アイソメトリック訓練。(5週)
ギプスカット。可動域訓練開始。圧痛 (−)、2日シャーレを使用してその後サポーターへ変更。片松葉杖歩行。(6週)
可動域制限 (−)、歩行時痛 (−)、カーフレイズ、腓骨筋トレーニング開始。松葉杖除去。(8週)
ジャンプトレーニング、ジョギング開始。特に疼痛 (−)(10週)
ランニング、野球復帰問題なし。inversion の痛みなし。正座としゃがみ込み可能。治療終了。運動時は足関節サポーターはしばらく着用を指導した。
ストレスX線(無麻酔): TTA 10°(初診時12°、健側 4°)健側差 6°(図4:10週ストレスX線)
(初診時)
患者: 16才、男性、高校バレー部。
受傷機転: 当日、バレーにてジャンプ着地時に内反捻挫
症状: 荷重時痛強く歩行不能、ATFL・CFL 周囲の圧痛著明、腫脹強い
ストレスX線(無麻酔): TTA 18°(健側 3°)、ADS (+)(図5:受傷時ストレスX線)
診断: ATFL および CFL 断裂
処置: オペ予定としシーネ固定にて入院(4日、オペ当日)
腰椎麻酔下にて観血的縫合術を行った。ATFL は関節包靭帯であるので、まず関節包を開き、血腫を除去して生理食塩水にて洗浄、ATFL を確認した。ATFL は引き裂かれるように断裂していた。CFL は腓骨側で断裂、ATFL 及び CFL に吸収糸をかけ、足関節軽度外反位にて ATFL より順次まとめて縫合した。関節包、皮下組織、皮膚を縫合し、足関節軽度外反位にてギプス固定。(オペ後1週)
ギプスカットし全抜糸。ヒール付きギプス巻き直し、翌日より部分荷重予定。(オペ後3週)
ギプス巻き直し。サポーター採型。ギプス内アイソメトリック訓練。(オペ後5週)
ギプスカット。可動域訓練開始。サポーターへ変更。(オペ後6週)
可動域制限 (−)、歩行時痛 (−)、カーフレイズ、腓骨筋トレーニング開始。松葉杖除去。(オペ後8週)
ジャンプトレーニング、ジョギング開始。特に疼痛なし。(オペ後9週)
ランニング、バレーボール復帰問題なし。inversion の痛みなし。正座としゃがみ込み可能。治療終了。運動時は足関節サポーターはしばらく着用を指導。
ストレスX線(無麻酔): TTA 7°(初診時18°、健側 3°)健側差 4°、ADS は初診時より移動大きい。(図6:9週ストレスX線)
(初診時)
患者: 14才、女性、中学テニス部。
受傷機転: 当日、コンクリートの段差(歩道)に乗りそこねて内反捻挫した。
症状: 荷重時痛強く歩行不能、ATFL・CFL 周囲の圧痛著明、外側部が全体的に腫脹
ストレスX線(無麻酔): TTA 16°(健側 5°)、ADS (+)
(図7:受傷時ストレスX線) (図8:受傷時外観)
診断: ATFL および CFL 断裂
処置: オペ予定としシーネ固定にて入院とした。(5日、オペ当日)
腰椎麻酔下にて観血的縫合術を行った。ATFL は腓骨寄りで断裂していた。CFL は中央で断裂、ATFL 及び CFL に吸収糸をかけ、足関節軽度外反位にて ATFL より順次まとめて縫合した。関節包、皮下組織、皮膚を縫合し、足関節軽度外反位にてギプス固定。(オペ後1週)
ギプスカットし全抜糸。ヒール付きギプス巻き直し、翌日より部分荷重予定。(オペ後10日)
退院(オペ後3週)
ギプス巻き直し。サポーター採型。ギプス内アイソメトリック訓練。(オペ後5週)
ギプスカット。可動域訓練開始。サポーターへ変更。片松葉杖歩行。(オペ後6週)
可動域制限なし。カーフレイズ、腓骨筋トレーニング開始。松葉杖除去。(オペ後8週)
歩行時痛なし。ジャンプトレーニング、ジョギング開始。特に疼痛なし。(オペ後12週)
ランニング、テニス復帰問題なし。inversion の痛みなし。正座としゃがみ込み可能。治療終了。足関節サポーターはしばらく着用を指導。
ストレスX線(無麻酔): TTA 6°(初診時16°、健側 5°)健側差 1°、ADS は初診時と変わらず。(図9:12週ストレスX線)
・症例1、テーピング例 TTA 19°→ TTA 14°(5°改善、健側 8°、健側差 6°)
・症例2、ギプス例 TTA 12°→ TTA 10°(2°改善、健側 4°、健側差 6°)
・症例3、オペ例 TTA 18°→ TTA 7°(10°改善、健側 3°、健側差 4°)
・症例4、オペ例 TTA 16°→ TTA 6°(11°改善、健側 5°、健側差 1°)
(治療法の選択とストレスX線)
新鮮足関節外側側副靭帯損傷の治療法は大きくわけて保存的治療・手術的治療がある。一般的に初診の段階において手術的治療が薦められる例は、ATFL および CFL 断裂が予想されるといった客観的診断の他に、競技レベルのスポーツを行っている者や重労働者などで、スポーツや職場への早期復帰を希望するなどの患者の意向によるものが大きい。
どのような手段で靭帯断裂や損傷の程度を知り、どのような客観的基準を用いて治療法を選択するかはこれまで様々な議論がなされてきた。議論の多くはストレスX線(TTA や ADS)の結果を重要視するものであり、その他に関節造影や臨床症状より判断するというものもある。ストレスX線による診断は、動揺性に個人差があり、麻酔の有無、撮影者の手技の違い、測定法のばらつき、疼痛による筋収縮などの不確実な要素があり、確定診断とはならないことを理解すべきであろう。最近は測定機器を用いる方法もあるがまだ一般的ではない。しかし、重症例において治療の選択をする際に大きな情報となることは間違いないであろう。(保存的治療)
専門家の意見の中に、すべて保存的に治療して後に問題のある例に対してのみ手術的治療(再建術)を行うといったものがある。確かに今回報告した症例の中にもあったように、他覚的に動揺性が残存していても自覚的には不安もなくスポーツに復帰できているケースも存在する。すべて保存的に行い、最終的に愁訴のある例に再建術を行うといった意見にも耳を傾けることが可能ではないかと思われる。 では、実際にどのくらいの割合で愁訴がある例が発生するのであろうか。山本の報告 2) では、重症例に対して保存的にギプス固定を 4 週、その後 2 〜 3 ヶ月装具を使用した結果、89%が元のスポーツに復帰し、9%が再受傷し、7%が不安感を訴えたとしている。おおむね成績は良好であるが、そうでないケースも存在することも明らかである。
保存的治療を行う場合、ギプス固定はどのくらいの期間行えば良いのであろうか?わが国においては、1960 年代から1980 年代にかけて 6 週間のギプス固定とその後 2 〜 3 ヶ月装具を使用することで良好な成績であったとする報告が多く見られた 3) 。1990 年代に入りギプス固定は 4 週間へと短くなり、さらに 3 週、 2 週、 1 週と短くなり、最近では機能的装具のみとする報告もある。
組織学的な視点から、靭帯の修復には 6 〜 8 週(接合が十分で 3 週 5) )でほぼ治癒するとしているが、引っ張り強度は 8 週で正常の 50 〜 60 %と言われている 4) 。早期関節運動が靭帯の強度を増すことからも、ギプス固定等による固定期間は短くなりつつあるが、再受傷の危険のあるスポーツや重労働時は長期間(復帰後 3 〜 6 ヶ月)にわたりサポーターやファンクショナルテーピング、もしくはアスレティックリハビリテーションが必要となるであろう。(手術的治療)
保存的治療での不安は、断裂部の癒合不全による機械的不安定性である。このことから靭帯断裂が疑われれば、はじめから外科的治療を行うべきとの意見もある。これらの意見の主張は、靭帯の組織学的修復を完全に行うには断裂部を確認して修復するのが確実であるということのようである。那須 5) は、靭帯断裂の損傷様式は裂離骨折・裂離・断裂とがあり、約 20 %を占める裂離骨折と裂離は、保存的な接合は困難であり、診断も手術的に確認するしかない。競技レベルのスポーツに復帰を望むのであれば、ATFL 単独断裂、CFL との二重断裂を問わず、すべてに手術が必要であると述べている。同じように山本 6) は手術的治療を行った症例の断裂様式を検討し、腓骨や距骨の付着部付近で断裂し、関節腔内に短縮され垂れ下がった形態をとれば、靭帯の断裂端同士が整復されないことから、手術の必要性を訴えている。断裂様式を術前に明らかにすることが困難なことから、手術がもっとも確実な治療法と述べている。 今回の症例において、手術的治療を行った方が、保存的治療を行った症例より TTA が大きく改善した。このことは手術群とギプス群(ギプス3週その後装具3週)とを比較した報告 1) において、3ヶ月後の検査で手術群は TTA が平均11°改善したのに対し、ギプス群は平均4°の改善となったことと一致している。靭帯の組織学的修復という立場からは、手術的治療は確実な方法といえるのではないかと思われる。最後に熟練した専門医による手術的治療を簡単に紹介したい。岡崎 7) は、オペの適応を、疼痛・腫脹・圧痛が顕著であり、二本以上の断裂であり、患肢の荷重が全くできず、スポーツレベルが高いことなどを条件に、局所麻酔下にて外来手術を行っている。手術時間は約 10 分、術後はギプスを行い、ギプス用サンダルにて手術翌日より全体重負荷にて歩行開始、2 週でギプスカット、抜糸を行い、アンクルラップ(簡易サポーター)にて歩行させる。3 週よりつま先立ち、ジャンプ、可能ならランニングを開始(アイシングを行いながら)する。順調なら 4 週でテーピング、アンクルラップにてスポーツ復帰としている。
・足関節外側側副靭帯の断裂が疑われた新鮮例4例について治療と経過を報告した。
・手術的治療を行った方が、保存的治療を行った症例より TTA が大きく改善した。
・全ての症例において自覚的な不安感はなく、スポーツ復帰が可能であった。
・保存的・手術的治療の選択について考察し、最近の治療に関する考え方を文献上から紹介した。
1) 糸井恵ほか: 新鮮足関節外側靱帯損傷の手術的治療. 四肢スポーツ外傷の手術的治療 (林浩一郎編). 210-217, メジカルビュー社, 東京, 1996
2) 山本晴康: 新鮮足関節靱帯損傷. MB Orthop, 9(10): 147-152, 1996
3) 城所靖郎: 急性足関節靱帯損傷の保存的療法. 臨床スポーツ医学, 19(2): 129-136, 2002
4) 藤巻悦夫: 靭帯損傷の病態. 整形外科MOOK 58, 関節靭帯損傷(伊丹康人ほか編). 42-48, 金原出版, 東京, 1989
5) 那須亨二: 足関節外側靱帯損傷 新鮮例の手術療法. 骨・関節・靱帯, 6(5): 527-535, 1993
6) 山本龍二: 新鮮例の手術療法 適応の問題を含めて. 骨・関節・靱帯, 6(5): 545-551, 1993
7) 岡崎荘之: 急性足関節靱帯損傷の外科的療法. 臨床スポーツ医学, 19(2): 137-141, 2002