報告: 白石洋介
今回のレポートは私の体験報告です。この体験から長胸神経麻痺の鑑別手技の一つとして用いられる「壁押しテスト」より、「上肢を伸展したまま前方へ挙上させる動作に対して、検者がその挙上に抵抗を与える」方法の方が肩甲骨が顕著に浮き上がる場合があることがわかりました。日常の診療にお役に立てばと思います。
「経過」 自宅と解剖教室の行き来など、ノート型パソコンを外出時に携帯するようになり、1ヶ月あまり経ったある日、パソコンを担ぐ側の右側の肩がとても重く痛んでくる(筋痛様)。何となく右肩が下がっているように感じるようになる(写真)。
日にちの経過と共に上肢を挙上する力が入りづらくなる。いわゆる前に習えの姿勢維持が右上肢はできなくなる。自動運動では、挙上時約30度くらいまでは上肢を重く感じないが、それ以上は重く感じ、90度前挙を維持するにはとても努力を要した。完全に挙上してしまえばその肢位を維持することは困難ではなかった。肘伸展位による壁押し動作で肩甲骨が浮く(写真1)(写真2)。しかし、上肢の自動挙上動作に抵抗をかけた方が肩甲骨の内縁の浮き上がりが明確に示された。ここで長胸神経が麻痺を起こしている可能性大との判断に至る。
同日、米田医院受診、長胸神経麻痺と診断され、5日間、消炎剤(ロキソニン)ビタミン剤(メチコバール、ユベラニコチネート)など処方を受ける。
「治療」 パソコンを持ち歩くのをできるだけ控え、また担ぐ肩を左に変えた。上肢の下垂を緩和するために肩から上腕の外側に上腕に対し長軸に弾力性テープを貼付、約2週間で自発痛などは消失し、その後、少しづつ筋力も戻ってきた。発症後2ヶ月くらいで、日常動作には支障なくなる。しかし、物を担ぎ上げようとする動作では明らかな筋力不足を感じることは続いている。
この体験で学んだこと。
1,はじめは筋肉痛様の疼痛としか自覚できない。
2,物を肩に下げることで、鈍痛と共に上肢がとてもだるくなる。
3,物を肩にぶら下げることをやめるとかなり急速に鈍痛が低下する。
4,握力も低下する(損傷の高位によるのかもしれない)。
5,回復は末梢から少しづつ。
6,壁押し検査より、上肢前挙への抵抗負荷の方が、肩甲骨内側下縁の浮き上がりが明確。
7,耳元まで挙上すれば上肢の重みを感じずに、その肢位を保持できる。
8,激しい痛みはない。