小児上腕骨顆上骨折で経皮ピンニングとなった2症例

報告: 永冶隆宏

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【はじめに】

 整形外科にて経皮ピンニングを受けた小児上腕骨顆上骨折(伸展型)を2症例を紹介します。症例1は整復中に後方骨膜の連続性が断たれたため、骨片の安定性が不安定になり、整復に難渋し、後日再整復が必要になったケースです。一方、症例2は骨折部は安定していたケースです。
 治療機関の違いとしては、症例1は入院施設のある病院に休日救急で受診されたケース、症例2はスタッフの少ないクリニックに受診され、病診連携にてオペのみを外部の医療機関に依頼したケースです。
 同じ回旋転位の生じた2つの骨折ですが、骨片の安定性の違いやスタッフの人数などの施設要因などにより、経過が左右されている点に注目していただきたいと思います。

【症例1】

(受傷時当日)
 患者は7才の女の子、公園のうんていより落下、手を突き受傷。休日であったため、当番医療機関である整形外科専門病院を受診する。(図1:受傷時外観)
X線撮影により、左上腕骨顆上骨折(伸展型)と診断される。(図2:初診時X線)
神経損傷はなし。

 当日は休日のため、アルバイト医師(大学病院の整形外科医局員)と柔整師1名、看護師1名の計3名のみのスタッフで治療にあたる(他のスタッフは不在であった)。医師の判断により、整復して経皮ピンニングを行うとの指示、麻酔は腋窩ブロックを行う。

<整復ドキュメント>
 麻酔が効くまで15分以上待ち、患者をレントゲン室の撮影台にうつ伏せに寝かせる。前腕をベッド脇より下垂させ、医師が牽引は行わずに後方転位した骨片を前方(屈曲方向)にゆっくり圧迫するも、後方の骨膜破損のためか、バチンと音がして、以後骨折部不安定となる。その後、上向きにさせイメージ下に整復を試みるが、腫脹も強くなり整復位保持が困難。回旋転位が残ったまま、応急処置的に Kirschner 鋼線にて cross pinning を行う。上腕ギプスにて固定。入院となる。
 正面像は前腕が重なり読影不可(悪い例)。通常は少し斜位より撮影し確認する。側面像は、anterior spike(回旋転位の残存)が存在し、後方は連続性が断たれている。(図3:ピンニング後X線)
 整復不良にて後日再オペの予定となり入院。再オペは腫脹がある程度消失してからとの予定であるが、全身麻酔のための麻酔医を外部医療機関より招く必要があったことから、結果的に再オペの予定は受傷後9日目となる。

(受傷後9日、再ピンニング)
 スタッフは整形外科医1名、麻酔医1名、柔整師3名、ナース1名の計6名。

<整復ドキュメント>
 手術室にて手術台に上向きに寝かせ、麻酔医が全身麻酔をかける。外科用アーム式イメージで確認しながら、Kirschner 鋼線を抜釘し、すでに仮骨形成あったが再骨折させ、正面より回旋転位および内外反を再整復(指標は Baumann's angle, ボーマンズアングル)し、側面像より前腕含む末梢骨片を屈曲方向に持っていき、上腕骨小頭との傾斜角を合わせ整復終了。 整形外科医により Kirschner 鋼線にて cross pinning を行う。その後、ポータブルレントゲン装置にて撮影、確認し、体幹ギプス固定を行う。
 X線像は、斜位では多少ギャップがあるが、整復の指標を Baumann's angle に置いているので、問題なし。側面像では anterior spike は解消し、上腕骨小頭との傾斜角も50°と整復されている。(図4:再ピンニング後X線)

(再ピンニング後10日) 退院

(再ピンニング後3週)
 ギプスカットし上腕ギプス巻き直し。Baumann's angle 70°、仮骨も旺盛。(図5:再ピンニング後3週X線)

(再ピンニング後4週)
 ギプスカットし、抜釘、薬浴、自動介助運動開始。活動時はソフトシーネ固定とする。可動域は伸展−60°、屈曲100°

(再ピンニング後5週)
 固定除去、温浴開始、可動域は伸展−30°、屈曲115°(図6:再ピンニング後5週X線)

(再ピンニング後6週)可動域は伸展−20°、屈曲130°
(再ピンニング後7週)可動域は伸展−12°、屈曲135°
(再ピンニング後8週)可動域は伸展−5°、屈曲140°

(再ピンニング後約3カ月)
 可動域は伸展10°、屈曲140°(健側の可動域は伸展15°、屈曲150°) XーP:癒合、体育の鉄棒許可。(図7:再ピンニング後3カ月X線)

(再ピンニング後約5カ月)
 可動域は伸展10°、屈曲145°XーP:問題なし。(図8:再ピンニング後5カ月X線)


【症例2】

(受傷時当日)
 患者は5才の女の子、2段ベッドより落下し受傷。入院施設のない整形外科医院(医師1名、柔整師2名)を受診する。X線撮影により、左上腕骨顆上骨折(伸展型)と診断される。神経損傷はなし。X線像では側面で、anterior spike があり回旋転位が存在するも、後方の骨及び骨膜の連続性がある。(図1:初診時X線)

 この整形外科医院ではスタッフも少ないためイメージでの整復は行っておらず、入院施設もないため、入院施設のある近くの整形外科へ紹介(病診連携・オペのアウトソーシング)することを医師が判断。
 応急処置として、変形を愛護的に正し、やや伸展位のギプスシャーレ固定を行う。 (図2:応急処置後X線)

(受傷後2日)
 紹介先の整形外科にて、全身麻酔下にて整復し、経皮ピンニング(クロスピンニング法)を行う。上腕プラスチックギプス固定にて入院。5日後に退院し、その後に最初に受診した整形外科医院に再来院。(図3:ピンニング後5日X線)

(ピンニング後14日) 刺入部開窓

(ピンニング後3週)
 Kirschner 鋼線の抜釘、上腕プラスチックギプス巻き直し。(図4:ピンニング後3週X線)

(ピンニング後4週)
 ギプスカット、三角巾のみとする。自動介助運動開始、可動域は伸展−60°屈曲100°、X線像では、Baumann's angle 71°、上腕骨小頭との傾斜角も正常の範囲。(図5:ピンニング後4週X線)

(ピンニング後5週)
 可動域は伸展−50°屈曲115°、温熱療法、持続伸長による ROM 訓練開始。(図6:ピンニング後5週X線)

(ピンニング後6週): 可動域は伸展−20°屈曲130°
(ピンニング後7週): 可動域は伸展−5°屈曲130°
(ピンニング後8週): 可動域は伸展10°屈曲135°、治癒とする。


【まとめ】

・骨折部安定性は後方の骨膜が保たれているかに左右される。保たれていれば屈曲位で安定するが、腫脹の強い場合は屈曲位が困難なケースもある。
・整復は事前の綿密な計画の上行い、骨膜の破損に注意する。(末梢骨片の短縮・後方転位を確実に解消し、Baumann's angle を指標に整復してから、骨片を含む前腕を屈曲位に持っていく。いきなり屈曲しないこと。)
・内反肘の原因は成長軟骨損傷による内側成長障害もあるが、多くは回旋転位(骨片の内旋)が解消されず、内側の高さが減少するためであり、整復・固定は保存的・外科的を問わず、正確・確実に行われなければならない。
・整復から固定(X線やイメージ、ピンニングも含む)を行うにあたり、あらゆる事態を想定し、十分な数のスタッフを用意するか、スタッフがそろわない場合は病診連携するのが望ましい。

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