中手骨(頚部・骨幹部)骨折に対する固定法の紹介

報告: 中村宗成

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【はじめに】

 中手骨(頚部、骨幹部)骨折の症例を各々1例ずつ示し、それらの固定法を紹介します。頚部骨折の例は典型的な Boxer's Fructure 、骨幹部骨折の例は螺旋骨折で短縮、回旋転位のあった症例です。中手骨骨折は骨折の型や転位の程度により固定肢位や再転位に悩まされることが多いものですが、今回報告する固定で転位及び関節拘縮も少なく予後良好な結果が得られました。今後、保存療法の範囲を明確にする為の一助になればと思います。

【症例報告1】

中手骨骨幹部骨折の例

58 才 男性

(受傷機転)
 自転車乗車中、対向してきた自転車とすれ違う際、右小指を引っかけ受傷した。X-p 検査により、右第 5 中手骨骨幹部に螺旋型骨折を認めた。短縮、内旋、外反、背屈転位を呈していた。(図 1: 初診 X-P )

(特記事項)
 紹介いただいた接骨院との医接連携で対処した。

(徒手整復)
 患者を仰臥位とし、術者は X-p 観察に加え爪の向きから回旋転位を計り、長軸上に牽引を加え、短縮転位、回旋転位を整復した。骨折部への直達的な操作はほとんど加えなかった。充分転位が整復されたことを確認の上、牽引を持続しながら固定した。

(固定)
・材料
 アルミ副子(アルフェンス 1 号)、伸縮性テープ、パッド(特殊発泡スチロール製テーピングパッド約 10 ミリ厚、目の粗いスポンジ約 5 ミリ厚、ガーゼを重ねた物)を使用した。(図 2: パッド材料写真)
・範囲及び肢位
 指尖より前腕1/2までの範囲で固定した。手関節:軽度背屈位、MP 関節:軽度屈曲位、PIP , DIP 関節:伸展位
 固定中の短縮、回旋転位を予防するため伸縮性テープを使用し、長軸上に牽引を加え牽引装置を作成した。加えて、下凸転位を予防するため中枢骨片側の掌側とアルミ副子の間にパッドを入れた。(図 3: 固定外観、整復固定後 X-P )

(経過)
・受傷後約 1W : 牽引による関節拘縮を嫌念し、伸縮性テープの牽引を除去した。固定範囲は指尖より前腕 1/2 までと初診時の固定範囲と変化なし。レントゲン所見で転位無く経過良好と思われた。(図 4: 1 W X-P )
・受傷後約 2 W : 手関節、PIP 関節 free としアルミ副子固定を継続した。(図 5: 2 W X-P )
・受傷後約 3 W : 第 4 , 5 中手骨部を尺側から覆う固定に変更した。(図 6: 3 W 固定外観)
・受傷後約 4 W : 短縮転位は軽度であり経過良好と思われた。(図 7: 4 W X-P )


【症例報告2】

中手骨頚部骨折 ( Boxer's Fructure )

46 才 男性

(受傷機転)
 酔って家の柱に右手部を強打し受傷した。(図 8: 初診外観写真)
 X-p 検査により、右第 5 中手骨頚部骨折を認めた。末梢骨片が屈曲、外旋転位を呈していた。(図 9: 初診 X-P )

(既往症)
 バージャー病あり。右第 4 指は常に冷感、痺れ感等の知覚異常が存在した。

(徒手整復) 
屈曲整復法
1 患者を仰臥位とし術者は長軸上に牽引を加え、背側から末梢骨片を屈曲した。
2 牽引を持続しながら MP 関節を過伸展させ中手骨骨頭を掌側より押し上げた。
3 次に骨頭を把持しながらMP 関節、PIP 関節を最大屈曲し、基節骨底で中手骨骨頭を背側へ押し上げるように整復した。(3 は Jahss の method 1) を用いた。)

(固定)
・材料
 アルミ副子(アルフェンス 12 号)、伸縮性テープを用いた。
・肢位
 手関節:軽度背屈位、 MP 関節:最大屈曲位、 PIP 関節:最大屈曲位、 DIP 関節:free
 固定は骨間筋、虫様筋を弛緩、MP 関節の側副靱帯を緊張させる事を目的として行った。(図 10: 初診固定外観、整復固定後 X-P ) ・注意事項
 基節骨頭部〜PIP 関節部は副子による褥創が生じやすい為、経過観察の段階で綿花、スポンジなどを入れた。

(経過)
・受傷後約 1 W :手関節 free にし MP 関節、PIP 関節最大屈曲位での固定に変更した。来院時、中手骨頚部を把持した上で他動的に MP , PIP 関節伸展運動を開始した。
・ 受傷後約 2 W : MP 関節最大屈曲位で同関節のみの固定へ変更した。
・ 受傷後約 2 .5 W : MP 関節を軽度屈曲位(約 45 度)に変更した。
・受傷後約 3 W : MP 関節 Free とし、中手骨を外側から覆う程度の固定に変更した。(図 11: 固定外観)
・受傷後約 4 W : 転位も無く経過良好と思われた。(図 12: 4 W X-P )


【まとめ】

・中手骨頚部および骨幹部骨折の保存的固定法を紹介した。
・簡易的な外固定で整復位の持続的保持が得られた。

【参考文献】

1)Jahss, S. A. : Fractures of the metacarpals ; a new method of reduction and immobilization. J. Bone Joint Surg. 20-A : 178-186, 1938.

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